春と阿修羅

ノーガード。ばくれつパンチ、ロックブラスト、はたきおとす、バレットパンチ。

NICO Touches the Wallsというバンド

久方ぶりのブログ更新となる。

元々筆まめな人間ではないし、こまめに更新をするような几帳面さを持ち合わせていないとはいえ、前回更新から2年以上経ってしまっている自分の飽きっぽさには中々に辟易としてしいる。

アウトプットばかりの生活で受動的な人間になるのが嫌だ~!自分の考えをしっかりとインプットする機会が欲しい~!と格好だけは一丁前の大義名分でブログを開設した手前、今更の再開は中々に格好が悪い。

忘れ去られたままフェードアウトしたほうがマシである。

だけど文章を書くという行為は正直好きだし、アウトプットしたい内容も増えつつある。

だからほぼ瓦解しかけている面目をかろうじて保つという意味でも、取り敢えず定期的な更新に今一度着手をしてみようじゃないか!と思い至ったのである。

何事もこっそりちまちまとやる事が好きな人間だから、記事の更新の度に見て見て~!と周り共有することは無いと思うけど、これからは気が向いた時にジャンルに拘らずに雑多な文章を書けていけたらいいな!

(前回書いたブログは読み返したら猛烈に恥ずかしくなったので非公開にしてます👳)

 

中学校3年間野球部に所属していた。

運動神経が絶望的に皆無な僕は一向に野球が上手くなる気配がなく、公式戦どころか練習試合すらまともに出場しないまま、中3の時に転校をすることになった。

転校先では何故か「野球の天才が引っ越してくる!」「前の野球部では常にクリーンナップを打っていた!」といったように、とんでもなくデカイ尾ひれが付いた噂が広まっており、監督に適正を確かめられることもなく、あれよあれよという間に練習試合でセンターとして人生初のスタメン出場をすることとなった。

怒涛の展開で緊張を通り越して逆に気が抜けた僕は、今日の空は青いな~!とセンターから見る広大な景色にうっとりと呆けており、監督の「お~~い!!!!打球いったぞ~~!!!」との怒声で我に返った時には、既に相手バッターの打球は僕の頭の上を勢いよく通過していた。

頭が真っ白になりながら無情にも転がっていく白球を追いかけ、ランニングホームランを相手に許した僕はその回の終了後に当然交代となり、気がつけば試合が終わり、気がつけば帰宅していた。どうやって帰ったのかも覚えていない。

靄が掛かった記憶の中、ただ一つ覚えていたのは外野守備からベンチに戻った時の、夜道で妖怪を見つけたかのように驚愕の目で僕を見る監督の表情で、脳内にこびり付いたその表情は中学校を卒業するまで、終ぞ消えることはなかったのである。

 

上記のように、ポケットの中のビスケットの如く脆いメンタルの僕は、気持ちの切り替えという行為がとことん苦手である。

電車でご老人に席を譲るタイミングが掴めずに、目の前でずっと立たせてしまった日の夜にはベッドの中でそのシーン反芻して自己嫌悪に陥る。

厳格なルールがあるタイプのラーメン屋で、注文方法の間違いを注意された時には、次の日になってもそのことを引きずる。

心の底から愛していたバンドが活動終了をして2年以上経過したにも関わらず、そのロスから全く抜け出せずに未だにウダウダとしているのは、そんな僕にとってはもはや自明の理なのであろう。

 

 

NICO Touches the Wallsというバンドは本当に唯一無二のバンドである。

活動終了から2年以上経った今でも、未だに彼らの音楽はSpotifyの再生ランキングのベスト3の常連だ。

新生活への焦燥と期待が入り混じった表情をする新社会人を横目に、桜並木をポケットに手を突っ込み歩きながら聴きたい曲は間違いなくTOKYO Dreamerだ。

人工の光が一切無い山奥のキャンプ上で、吸い込まれそうになる程の満天の星の元、パチパチと静かに揺れる火を囲みながら聴きたい曲はアコースティックVer.のホログラムだ。

生のロックバンドのサウンドに目がまんまるになるほどに圧倒され、気になったバンドのライブに足繁く通うようになったきっかけの曲は間違いなく2014年のRIJFで見た夏の大三角だ。

 

ブログらしく上記に挙げた曲の紹介をさせて欲しい。

音楽関連の用語はチンプンカンプンなので語彙力皆無なのは許してください……。

 

1.TOKYO Dreamer 

Vo.光村龍哉が10代の頃に制作した名曲。イントロのギターの音色がとにかく心地よく、

ミディアムテンポながら壮大さや哀愁を感じる曲調は何度聴いても胸に来るものがある。

サビの「東京の街は32連のスペアナ」という歌詞が特にお気に入り。

スペアナ(音の周波数を表した棒グラフのようなものを指すらしい)が32に連なった様子を、東京の高層ビル群に例えるという天才的な発想で書かれた歌詞だ。

新生活や夜の散歩といった情景にピッタリな曲だから是非聴いてほしい。

 

 

2.ホログラム (Acoustic)

昼が一転して夜になる。

オリジナルVer.の次にアコースティックVer.を聴いた時に真っ先に抱いた感想だ。

この曲に限らず、彼らのアコースティック編成の変幻自在ぶりは他のバンドが行うそれとは一線を画していると思う。(他のバンドを貶めるという他意は全く無いのであしからず!)

オリジナルの曲をベースにアレンジをしているのにも関わらず、コインの表と裏のように、阿修羅観音像のように、高校デビューする中学生のように、曲が覗かせる表情が劇的な変化を遂げるのだ。

百聞は一聴に如かず!ということで、まずはこの2つを聴き比べして欲しい。

 

 

 

アコースティックのみを収録したCDもあるからこちらだけでも是非!!!!

オリジナル曲と比べながら聴くと笑っちゃうほど楽しいよ。

 

 

3.夏の大三角形

言わずとしれた夏のド名曲。夏の容赦ない暑さも、次々と吹き出す汗も全て吹き飛ばしてくれるような、どこまでもどこまでも突き抜けていく曲。本当に夏の野外が似合う。

一昨年のとある配信ライブで「友達の曲歌います」と前フリしてUNISON SQUARE GARDENの斎藤さんがカバーしてくれたことがあったんですよね……。本当に救われました……。

 

 

 

曲紹介ついでにメンバーの魅力も一つ。

メンバーそれぞれが今までやったことがなかったことを1人で実施する企画で架空のバンドのボーカリストイーブイというバンドの光村サトシ)として路上ライブを敢行するボーカル。

TWISTER発売記念イベントのじゃんけん大会で見事勝ち残った僕に「卒業おめでとう!」と小ボケを挟んでサイン入りポスターを手渡ししてくれたドラム。(緊張しまくっていた僕はそのボケに咄嗟に反応できず、オタク特有の引き笑いをしながら吃りつつありがとうございますと言うのが精一杯だった。時間戻してやり直したいね。)

ライブの曲間中に1Lのコーラ一気飲みに唐突にトライして、半分もいかないあたりでギブアップしてなんとも言えない空気にしてしまうベース。

その残りを奪い取ってカッコよく飲みきり、いいとこ取りで会場を沸かせちゃうギター。(その後顔をしかめながら苦しそうに「やった!」って言うのがかわいい。)

もう全てが全て本当に愛おしい。愛しか無い。

活動終了後、改めてじっくりと彼らの音楽に向き合うことができたせいか、活動終了前よりも今のほうが愛が増している気がしてならない。

 

 

前々から活動自体は知っていたけれど、先日ついに光村龍哉が立ち上げた北海道発の新バンドZIONの結成が公式にアナウンスされた。

新バンドでも音楽に対するその飽くなき姿勢はNICO Touches the Walls時代となんら変わらず「バンドが理想とする音楽性にマッチする環境で作品作りやレコーディングをするため」という目的のもと、北海道の古民家をスタジオに改造してメンバーと寝食を共にしながら音作りに没頭するという徹底ぶりのようだ。

実は既に北海道のライブハウスでは何度かこっそりライブ実施しているというのも、一方的に活動終了をSNSで告知して15年間の活動にあっけなく幕を降ろした彼らしさが垣間見えて、捻くれっぷりは健在なんだなぁとしみじみとしてしまう。

ただ、多少の心構えはできていたとはいえ、新バンド結成の正式なアナウンスは内心複雑で、記事の中にある“元”の文字を見ると、改めて終わってしまった現実を叩きつけられているようで辛い。

けれど、それまでの活動を一方的に畳んでまで彼がやりたかったことを知りたい、という好奇心は悔しいけれど捨てきれない。

サヨナラも言わず颯爽と去ったことに対する怒りは少からずあるけれど、結局のところそれ以上に彼の魅力に心底惚れ込んでしまっているのだ。

無表情で数多もの強打者を淡々と討ち取っていった野茂英雄の如く何を考えているか分からない彼が、今後邦ロックど真ん中のストレートを投げるか、変化球を中心とした一部の物好きの為の老獪な投球を披露するか、型にはまらないメジャー流の変則的な投球で受け手を蠱惑をするのかは全くの未知数だ。

(PVが公開されているようだけど、正式な音源リリースまでは情報を一切入れないという面倒臭い拘りがあるからまだ見ていない。アーティストが面倒くさければファンもまた然りなのよ。)

まずは6月に渋谷WWW Xでのお披露目ライブが控えているようなので、新バンドなんかに応募するもんか!とプリプリと怒る姿勢は見せつつ、こっそりと応募しようと思っている。

単純に楽しみね。

 

NUMBER GIRLが「2018年初夏のある日、俺は酔っぱらっていた。」から始まる最高に格好良い名文と共に復活を遂げたように、NICO Touches the Wallsがこのまま終わるはずがないという確信めいた期待がある。

メンバーの4人は今それぞれ全く別の道に進んでいるけれど、捻くれ者の集まりのことだから、ある時ふと思い出したように連絡を取りスタジオに入り「またやっちゃおうか?」という軽いノリで活動再開をする気がしてならないのだ。

QUIZMASTERという名盤を引っさげたレコ初ツアーもまだ満足に回ってもらっていない。

実現しなかった2019年の1125(イイニコ)の日に不自然に空いていたZeep Tokyoのスケジュールの埋め合わせもしてもらわなきゃ困る。

捻くれ者の物好きな音楽ファンは、今日もまた捻くれ者たちが作った物好きの為の音楽を聴きながら気長に活動再開を待つのである。